個別労働紛争の「あっせん」に応じるべきか
2011年11月15日更新
労働局(正確には労働局に設置される紛争解決委員会)や労働委員会から個別労働紛争に関する「あっせん」手続きの通知が届くことがある。経営者や人事担当者(特に過去にこういう経験の無い人)は、面食らって、つい感情的な対応をしてしまいがちだが、こういった時こそ冷静な対処が求められる。
まず、「あっせん」というのは、労使間の紛争(労働組合を介さない“個別労働紛争”に限る)に際して、相手方が、裁判所以外の第三者機関において“話し合い”を求めてきたものだということを正しく理解しておきたい。「あっせんによる解決」が「訴訟による解決」と最も異なるのは「勝ち負けを決するのでなく互いに譲歩しあう」という点であり、すなわち、相手方は解決後の人間関係を維持したいという気持ちがあるかも知れない(そうでないケースもあるが)ことは、考慮に含めておくべきだろう。
また、あっせんに応じた場合のメリットとして、「公開されない」ことが挙げられる。つまり、ライバル会社が法廷で傍聴することも、事件の全貌が「判例集」に載ってしまうことも(「いわゆる事件名」に会社名が付されることも含め)、心配する必要が無い。
このほか、あっせんには、「短期間で解決する」、「印紙代や弁護士報酬等が不要もしくは低額」、「当事者同士が顔を合わせなくて済む」といったメリットもあり、あっせん手続きへの参加を求められたら、会社としてそれを拒む大きな理由は無いと言えるくらいだ。
もっとも、「あっせん手続きに参加すること」は、必ずしも「互いに譲歩しあうこと」を意味するものではない。あっせん案がまとまらなければ、その時こそ正式な訴訟手続きに移行すれば良いだけの話だ。
(社会保険労務士 神田 一樹)
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