昨年4月から米国で施行されている「JOBS法」をご存知だろうか?とは、JOBS法とは、「新興成長企業起業促進法(Jumpstart Our Business Startups Act)」のことで、2002年のSOX法の導入に伴う内部統制コスト負担増加をきっかけにIPOが減少したことを受けて導入されたもの。年間総売上10億ドル未満の新興成長企業が資本市場に参入しやすくよう、内部統制監査の免除などが盛り込まれている。
一方、日本では依然として大企業にもベンチャー企業にも同様の内部統制監査が要求されている。日本においても、内部統制監査がベンチャー企業のIPO意欲を削ぐ要因の一つとなってきたのは間違いないだけに、IPO関係者の間では、内部統制監査に批判的な声が少なくない。
では、日本でも米国のように一定規模以下の企業については内部統制監査が不要になるような政策が実施される可能性はないのか。この点、関係者の話によると、実現する可能性はかなり高いという。 政府は昨年11月に経済対策を打ち出しているが、そこでJOBS法に言及している(下記資料の13ページ一番上)。
実は、この経済対策が打ち出される前から政府及び市場関係者の間では日本版JOBS法構想が検討されている。具体的には、内部統制監査報告書の提出義務をIPOから一定期間免除する案のほか、現行制度上、有価証券の募集・売出しの際に提出が求められる有価証券届出書には「直近5年間分の監査済み財務諸表及び主要な経営指標等」を記載しなければならないところ、これを「直近2年間分」に短縮する案(これが実現すれば、上場準備期間の大幅圧縮が可能)、有価証券の募集・売出しの際に少額募集として簡易な様式による届出が認められる要件を、現行の「売出し価額の総額が5億円未満の場合」から「50億円未満」へと緩和する案などが出ている。
懸念されるのは、日本版JOBS法構想が持ち上がったのが民主党政権時代だという点だが、自民党の公約には「ベンチャー事業等の創造・活路支援」が盛り込まれており、その一環として日本版JOBS法の議論が進む可能性は高い。
これまで内部統制監査をはじめとする上場維持コストの増大や、上場に伴う様々な規制、リスクがベンチャー企業の上場意欲を減退させていた感は否めないだけに、日本版JOBS法が実現すれば小規模会社の上場が促進されることになりそうだ。