自民党、公明党は1月24日、平成25年度税制改正大綱が正式決定した。税制改正大綱の主要論点について、ポイントを解説する。
■法人課税
法人課税の改正では、設備投資促進や給与水準引上げによるデフレ脱却を狙いとした新たな税制措置が創設されている。後述する個人所得課税や資産課税に比べ、全般点に、減税の措置が多くなっているのも特徴と言えるだろう。
記号の意味 |
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減税 |
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増税 |
項目 |
内容 |
適用期日 |
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国内設備投資の促進税制 |
一定の条件を満たす場合、「新たに国内で取得した生産設備等に係る機械装置」について、取得価額の30%の特別償却又は3%の税額控除(法人税額の20%限度) ※一定条件(①②の充足) |
平成25年4月1日から2年間の間に開始する事業年度 |
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所得拡大の促進税制 |
一定の条件を満たす場合、「雇用者への給与支給の増加分」に10%の税額控除(法人税額の10%(中小企業者等は20%)限度) ※一定条件(①②③の充足) |
平成25年4月1日から3年間の間に開始する事業年度 |
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雇用促進税制の見直し |
税額控除の限度額を増加雇用者数×40万円(現行20万円)に引上げ |
大綱では適用期日等の具体的な明記なし |
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研究開発税制の見直し |
試験研究費の税額控除における控除税額の上限をその年度の法人税額の30%(現行20%)に引上げ |
大綱では適用期日等の具体的な明記なし
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中小法人の交際費課税 |
○限度額600万円 → 800万円に引上げ |
大綱では適用期日等の具体的な明記なし |
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商業・サービス業・農林水産業を営む中小企業の経営改善に向けた設備投資の促進税制 |
商業・サービス業・農林水産業を営む中小企業が経営改善に関する指導・助言により行う設備投資について取得価額の30%の特別償却又は7%の税額控除(法人税額の20%限度) |
平成25年4月1日から2年間の間に取得等して指定事業の用に供する |
■個人所得課税
個人所得課税の改正では、消費税率の引上げや、復興特別所得税による低所得者層への負担増を配慮し、富裕層への課税が強化されている。
また、家計の安定的な資産形成を支援するため、株式投資に係る軽減税率を廃止する代わりに、日本版ISAの創設や金融所得課税一体化が行われている。
内需拡大の柱に位置付けられる住宅投資については、消費税率引上げによる住宅需要の減少も見越し、住宅ローン減税が拡充される。
項目 |
内容 |
適用期日 |
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所得税最高税率の見直し |
課税所得4,000万円超について45%の税率を新たに設定 |
平成27年分 |
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金融所得課税の一体化を進める観点からの見直し |
- |
○特定公社債等の利子 |
平成28年1月1日以後支払を受ける分から 平成28年1月1日以後譲渡分から
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上場株式等の軽減税率 |
○上場株式等の配当・譲渡所得の10%軽減税率の廃止 |
平成25年12月31日をもって廃止 |
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少額投資非課税措置 |
非課税口座を開設し(毎年100万円まで)口座内の配当及び譲渡益は各開設年含む5年間非課税 |
平成26年1月1日から平成35年12月31日(10年間) |
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住宅ローン減税 |
適用期限4年間延長、控除額の拡充 <一般住宅の場合> ○既存住宅に対する特定改修工事及び耐震改修工事をした場合の税額控除についても延長、拡充 |
平成29年12月31日まで
平成29年12月31日まで |
■資産課税
相続税・贈与税を中心とする資産課税については、所得課税の改正と同様に富裕層への課税が強化される。消費税率引上げを盛り込んだ社会保障と税の一体改革で先送りされた内容が実現する形。
一方、土地所有者の小規模宅地特例の拡充が図られるとともに、事業承継税制の要件の緩和も実施される。また、高齢者の保有する財産を現役世代に移転させることを狙い、教育用資金の非課税制度の創設や相続時精算課税の要件緩和も図られる。
項目 |
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内容 |
適用期日 |
相続税の税率構造見直し |
税率が6段階から8段階へ |
平成27年1月1日の相続から |
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相続税の基礎控除 |
3,000万円+600万円×法定相続人の数へ |
平成27年1月1日の相続から |
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贈与税の税率構造見直し |
税率が6段階から8段階へ |
平成27年1月1日の贈与から |
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小規模宅地等の課税価格の減額の見直し
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○特定居住用宅地の対象面積の拡大 |
平成27年1月1日の相続から
平成26年1月1日の相続から |
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相続税の税額控除引上げ |
○未成年者控除 |
平成27年1月1日以後の相続から |
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相続時精算課税制度 |
- |
○受贈者の範囲に20歳以上の孫(現行推定相続人のみ)を追加 |
平成27年1月1日以後の贈与から |
事業承継税制 |
- |
○経営承継相続人等が親族であることとする要件を撤廃 |
平成27年1月1日以後の相続・贈与から |
教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税
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直系尊属が教育用資金を一括贈与した場合、受贈者1人につき1,500万円まで贈与税が非課税
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平成25年4月1日~平成27年12月31日までに拠出されるものに限る |
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国外財産の課税対象の範囲増加 |
日本国内に住所を有しない個人で日本国籍を有しないものが、日本国内に住所を有する者から相続・贈与により取得した国外財産を相続税・贈与税の課税対象に追加 |
平成25年4月1日以後の相続・贈与に係る国外財産から |
■消費課税
消費課税では、消費税の税率引き上げに対する低所得者対策や車両に対する課税が焦点となっていたが、今回の改正議論の中では具体的な施策を取りまとめるには至らず、先送りされることになった。
項目 |
内容 |
消費税 |
○平成27年10月からの消費税10%引上げ時に導入を目指す |
車体課税 |
○自動車取得税は、二段階で引下げ、消費税10%引上げ時に廃止 |
■その他
項目 |
内容 |
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延滞税等の見直し |
○延滞税等の割合が見直しされる
特例基準割合:短期貸出約定平均金利+1% ○平成26年1月1日以後の期間に対応する延滞税等について適用 |
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印紙税の見直し |
○金銭又は有価証券の受取書(いわゆる領収書)に貼付する印紙の非課税の範囲が、現行5万円未満に引上げられる(現行3万円未満) ○平成26年4月1日以降に作成される文書に適用 |