働き方の変化に伴い、現行の労働法制が労働者の実態に対応していないとの指摘がある中、日本経済団体連合会はこのほど『労働者の活躍と企業の成長を促す労働法制』と題する提言をまとめた。
本提言には過重労働の要因になりそうなものも含まれており、今後議論を呼ぶことになりそうだ。
経団連が掲げた具体策は、以下8点に整理される。
(1) 企画業務型裁量労働制の対象業務・対象労働者を拡大し、手続きを簡素化
(2) 現行フレックスタイム制の不具合点の改正(計算方式の変更)
(3) フレックスタイム制における清算期間(現行では最長1か月間)の延長
(4) 天災発生時に限り代替日未定の労働日の変更を認める
(5) 三六協定の特別条項に関する基準(一時的・突発的かつ1年の半分以内)の柔軟運用
(6) 休憩時間の一斉付与規制の撤廃
(7) 勤務地・職種限定雇用において、その勤務地・職種が消滅した場合に契約終了とする
(8) 就業規則の合理性を、過半数労組との合意・労使委員会の労使決議等をもって推定
このうち(2)と(4)と(6)は、現実に即した改善案であり、特に問題とはならなそうだ。
一方、(7)と(8)は、判例で示された事由を法定化すべしとの意見であるが、これらは個々の労使関係を踏まえて判断すべき事項を多分に含むので、一般化するのは現実的でないだろう。なお、「金銭解決による解雇」の導入は、この提言では「困難」として見送っている。
問題となりそうなのは、(1)と(3)と(5)だ。特に(1)は数年前にも論争となった「ホワイトカラーエグゼンプション」(営業職・事務職等を労働時間規制から除外する)を含む案であり、(3)・(5)とともに過重労働の要因ともなりうるので、労働側からの反発は必至だろう。
今後の議論の行方を注視していきたい。
(社会保険労務士 神田 一樹)
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