平均勤続年数の推移が、男性と女性とでは異なる傾向にあることがわかった。これは中央労働委員会がこのほど公表した「平成24年賃金事情等総合調査」の確報における調査結果で判明したもの。
これによると、調査産業計(男女計)の「所定内賃金」は、前年の367.7千円を2.4%下回る359.0千円であった。所定内賃金はここ数年、ずっと微増減で推移してきたことを踏まえれば、これは「大幅ダウン」と評価されるべきだろう。しかも、男だけで見れば、1万円を上回るダウンであった。また、「所定外賃金」については、前年の62.7千円から64.4千円へ微増したものの、それでも平成20年の水準にも及ばない低空飛行を続けている。
ところで、この調査では属性調査として「平均勤続年数」も回答させているが、それについて男女別で異なる傾向が見られることは特筆に値するだろう。男の平均勤続年数は17.4年(前年差▲0.5年)であり、下降傾向が止まらない一方で、女は14.8年(前年差+0.4年)であり、調査開始以来最長となっているのだ。これは、勤続年数の長い団塊世代が退職していったことと、育児休業制度その他女性が仕事を続けられる環境が整いつつあることが影響しているものと思われる。
ちなみに、人事労務の専門家には改めて説明するまでもないだろうが、「平均勤続年数」とは、「在職している従業員の勤続年数の平均」である。まれに、「退職した者が在職していた期間を平均したもの」と思っている人もいるようだが、誤解の無いようにしておきたい。
さらに蛇足を加えれば、中央労働委員会の調査は、従業員1000人以上の大企業を対象としたものであり、中小企業の実態とは異なる可能性が高い。しかも、アンケートに回答した企業は優良企業であることが多く、数字をそのまま鵜呑みにするのは疑問だ。こういったことを承知したうえで、調査結果を読むべきだろう。
(社会保険労務士 神田 一樹)
情報提供:上場.com