厚生労働省はこのほど、各都道府県労働局が窓口になって実施している「個別労働紛争解決制度」の平成24年度における施行状況を取りまとめた。
それによれば、「総合労働相談」は106万 7,210 件と、前年度より3.8%減少した一方で、「助言指導の申し出」が過去最高の10,363 件(前年度比8.1%増)となったのは特筆すべきことだろう。「助言指導の申し出」とは、例えば「合理性の無い転勤命令」のような“明らかに違法”とは言えないまでも“不当”である可能性が高い事案について、労働局長からの事業主に対する助言や指導を求めるもので、制度施行以来増加傾向にある。ちなみに、厚労省によれば、この申し出に基づく労働局長からの助言や指導は、97.4%が1カ月以内になされているとのことだ。
もっとも、今回は、「助言指導の申し出」が増えたことだけではなく、「総合労働相談」も前年度より微減したとは言え5年連続で100万件を超えており、依然として高止まっていることは認識しておかなければならない。相談件数の内訳は、「いじめ・嫌がらせ」に関するものが51,670件(前年度比12.5%増)でトップとなり、これまで最多だった「解雇」が51,515件(前年度比10.9%減)、「労働条件の引き下げ」が33,955件(前年度比7.9%減)と続いている。
なお、相談者の内訳に占める「正社員」の割合は、平成14年度には53.6%だったものが年々逓減し、平成24年度は過去最低の39.8%となった。これは、非正規雇用の労働者との労働紛争が増加していることを示しているものではあるが、そもそも「個別労働紛争解決制度」は集団的労働紛争(労働組合と会社との間の紛争)を対象としていないため、正社員については数字に表れにくい点には、注意しておく必要がある。
(社会保険労務士 神田 一樹)
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