集団的消費者被害救済制度の法制化に関する議論が喧しい昨今、「内部通報制度」が改めて見直され始めている。
内部通報制度とは、会社の法令違反や不正行為等を知った従業員が社内に設置された窓口に通報できる仕組みのことで、会社にとっては次のようなメリットが有るとされる。
(1) 問題が小さなうちに解決でき、大きな損害を被らなくて済む
(2) 不祥事が突発的に外部へ公表されることによる風評リスクを軽減できる
(3) 社内に、違法・不正行為に対する牽制意識が働く
この他にもメリットは種々あるが、それらはすべて「コンプライアンス経営の実践」という一言に行き着くと言って良いだろう。
しかし、現状を見ると、この内部通報制度は、会社が期待しているほど活用されていないのも事実だ。その理由は、「通報したことで自分が不利益に取り扱われる可能性がある」、「窓口担当者と面識があるので相談しにくい」、「通報しても改善されることが期待できない」といったものが大多数を占める。これらは心理的な問題なので、いくら窓口担当者に「不利益取扱いの禁止」や「守秘義務」などを説明してスキルを高めたところで、解決しないだろう。
そのため、最近では、内部通報機関を社外に設ける会社も増えてきている。「“社外”の“内部”通報機関」というのは妙な用語だが、例えば会社から委託された「弁護士」や「社会保険労務士」が従業員からの訴えを受け付ける窓口になるというものだ。また、通報システムや秘密保持などのノウハウを持つ「警備会社」がこの分野に参入しているとも聞く。
社外に内部通報機関を設けるには当然費用が掛かるが、内部通報制度が活用されないことのリスク(上に掲げた「メリット」の裏返し)を考えれば、必要なコストではなかろうか。
(社会保険労務士 神田 一樹)
情報提供:上場.com