従業員の採用や昇進にあたり、「転居を伴う転勤に応じられること」を条件にしている会社は少なくないだろう。
しかし、この「転勤要件」を設けることに合理的な理由が無い場合は、職種に関わりなく間接差別に該当することが、今般、雇用機会均等法施行規則の改正(平成25年12月24日公布;平成26年7月1日施行)に盛り込まれたので、注意しておきたい。
雇用機会均等法第7条は、直接的には性別を理由としていなくても実質的に男女差別につながるおそれのある措置については、業務遂行上または雇用管理上必要である場合その他の合理的な理由がある場合でなければ講じてはならないと定めており、具体的な「おそれのある措置」としては、同法施行規則第2条に、次の3つが列挙されている。
1 労働者の募集・採用に当たって、労働者の身長、体重または体力を要件とするもの
2 労働者の募集・採用、昇進または職種変更に当たって、転居を伴う転勤に応じることができることを要件とするもの ※従来は「コース別雇用管理における『総合職』の『募集・採用』のみ」に限る措置であったが、今般の省令改正で対象が拡大された。
3 労働者の昇進に当たって、転勤の経験があることを要件とするもの
ちなみに、「3」に関しては、従来から、「生産現場の業務を経験すること、地域の特殊性を経験すること等が幹部としての能力の育成・確保に特に必要である場合」または「組織運営上、転居を伴う転勤を含む人事ローテーションが特に必要である場合」には転勤経験を要件とすることが是認されてきたので、「2」に関しても、これが準用されるものと思われる。
なお、ここで指摘されているのは、「採用等の要件として転勤を求めること」であって、会社が転勤命令を出せなくなるという話ではない。業務上必要なら、それこそ性別に関係なく、転勤を命じるべきだ。無論、権利の濫用になってはならないことは、言うまでもないが。
(情報提供:社会保険労務士 神田 一樹)
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