最長3年を上限としている労働者派遣制度について、事実上無期限で派遣労働者の受け入れが認められるよう法改正に向けての動きが進められている。これは、労働政策審議会の担当部会がまとめた報告書で明らかとなった。労政審はこれを厚生労働大臣に対して建議している。厚労省では、この建議の内容を踏まえ、平成26年通常国会で法改正し、平成27年4月からの施行を目指す予定だ。
報告書は、現行制度では専門性が高い26業務を除き派遣期間の上限を3年としているところ、この「26業務」という区分を撤廃し、すべての業務について労働者代表の意見を聴いたうえで3年を超える派遣受け入れを可能とすることが適当と提言している。
この「労働者代表」は、過半数労働組合(過半数労働組合がない場合には民主的な手続により選出された過半数代表者)とされており、就業規則制定時に意見を聴く相手と同じように決める。また、労働者代表から「常用代替の観点から問題あり」などの意見が出された場合、派遣労働者を受け入れ続ける企業には対応方針の説明義務を課すものの、その労働者派遣が認められなくなるわけではない。この点も、就業規則制定時の意見聴取に似た考え方だ。
一方で、派遣労働者個々に見れば、現行では専門26業務であれば期間制限なく派遣されることが可能であるところ、改正後は同じ派遣先に3年を超えて派遣されることはできなくなる。これは、派遣先が労働者代表の意見を聴いて派遣労働者の継続受け入れを決めたとしても、同様だ。なお、元々「無期雇用」とした派遣労働者には期間制限を設けない。
この建議の内容に対して労働者団体は労働者保護の後退を招くものとして反発を強めているが、企業サイドからは従来から強く要望されていた内容であるため、本国会で法改正される可能性は大と言える。ただ、必ずしもすべての業種・職種にとって使いやすくなるわけではないので、他の変更点も含めて詳細を確認しておく必要があるだろう。
(情報提供:社会保険労務士 神田 一樹)
情報提供:上場.com