政府は、このほど、東京圏(東京都・神奈川県および千葉県の一部)を「国家戦略特区」に指定し、「グローバル企業を誘致する国際的なビジネス拠点を目指す」として、海外資本の受け入れを促進していくこととした。そして、グローバル企業に日本の雇用ルールを理解してもらい、労働紛争を生じることなく事業展開できるよう、労働関係の裁判例の分析・類型化による「雇用指針」を定めた。言わば、政府が「この指針に沿って労働契約を締結し、運用すれば、労働紛争が生じにくい」という“ガイドライン”を設定したような形だ。
その内容は、まず「総論」として、日本企業に多い「内部労働市場型の人事労務管理」と外資系企業等に見られる「外部労働市場型の人事労務管理」の相違を考慮して裁判所が判断する事例があることを整理している。具体的には、内部労働市場型企業においては、使用者に解雇回避努力が求められる一方で、配転・出向等が人事権の濫用に当たらないとされるケースが多く、外部労働市場型企業においては、解雇に当たって金銭的な補償や再就職の支援(退職パッケージ)を提供する場合には、使用者に幅広い配転等の解雇回避努力が求められる程度は比較的少ない、といったことが書かれている。
続く「各論」では、「労働契約の成立」・「労働契約の展開」・「労働契約の終了」の3テーマについて、それぞれを細分化して、法令と裁判例を交えながら、日本における雇用ルールを具体的に解説している。外国人が読むことを想定してか、平易な日本語で分かりやすく書かれているのが特徴と言える。
この指針の内容は、厚労省自身も明言しているとおり、グローバル企業だけでなく、新規開業直後の企業等も理解しておくべき事項であり、また、上場準備企業の人事担当者にも、労働紛争防止の観点から参考になりそうだ。ぜひ一読しておかれることをお奨めしたい。
(情報提供:社会保険労務士 神田 一樹)
情報提供:上場.com