HOYA株式会社(東証1部)で株主から17議案も株主提案が行われていたことがわかった。同社の定時株主総会招集通知(5月26日付で同社サイトに掲載)によると、株主提案を行った株主は創業家を中心とする5名で議決権比率は0.016%。取締役会は株主提案のすべてに反対するとしている。
興味深いのは、第6号議案の「会計監査人不再任の件」。議案の要領としては「トーマツ監査法人を、会計監査人として不再任とする。」とある(正しくは「有限責任監査法人トーマツ」)。提案の理由としては、「当社は企業統治を改善すると思われる株主提案を不記載にするなどの行為を延々と繰り返しており、保全事件(東京地裁平成24年(ヨ)第20045号職務執行停止・代行者選任等仮処分事件、同平成25年(ヨ)第20021号株主提案議案等記載請求仮処分事件)でも被保全権利が否定されていないと読める決定が出ているため、違法の疑いは強いと第三者からみられる懸念があるが、同会計監査人は、内部統制等に関する適正意見を表明し続け、また同族企業に対する利益供与と疑われる取引等についても、ブランドイメージへの悪影響も含め、財務諸表に対する影響は累積すると無視できない額だと推定しうるが、問題にしている形跡がない。同監査人は、金商法193条の3に規定されている法令違反等事実発見への対応についての義務を果たしていない恐れがあり、会計監査人としての再任は不適切である。一般論として、会計監査人は7年程度をめどに定期的に交代させた方が、癒着が防げる。」としている。
このような株主提案に対して、取締役会は「当社は、株主提案に記載されている違法行為や同族企業に対する利益供与の事実はないと確認しております。また、これらに関する資料は、有限責任監査法人トーマツ(以下、トーマツ)に全て開示しております。トーマツはこれらを踏まえ総合意見として無限定適正意見を表明しており、トーマツを当社の会計監査人として再任することが不適切であるとする根拠はなく、本提案に反対いたします。なお、当社は、会計監査人選任に当たって定期的にグローバルベースでの競争入札を行っており、当社と会計監査人との癒着を防ぐ仕組みをすでに構築しております。」といった意見を記載している。株主提案を行った創業家側と現経営陣側の争いに監査法人も巻き込まれた格好と言えよう。
また、定款変更を通じて、株主側の主張を織り込む定番的な株主提案も多数行われている。たとえば、 ・取締役の任期制限に関する情報開示(指名委員会が、社外取締役の再任回数9回が超えるにも関わらず、当該取締役を取締役候補者とする場合には、かかる取締役候補者の再任が株主にとって最大利益であることを説明する株主への、開示を書面で必要とする。」との条項を、定款に規定する。) ・取締役の年齢制限に関する情報開示(指名委員会が、社外取締役の選任時の年齢が満72歳を超えるにもかかわらず、当該取締役を株主総会で取締役候補者とする場合には、かかる取締役候補者の選任が株主にとって最大利益であることを説明する株主への開示を書面で必要とする。」という条項を、定款に規定する。) ・役員研修に関する情報開示(取締役会は、当社における役員研修の方針を定め、株主に対して開示しなければならない。」という条項を、定款に規定する。)
といった内容だ。株主提案には誤植もあり、かつ、株主提案のボリュームも多いことから、一昨年の野村證券における株主提案を彷彿させる。しかし、定款変更に関する提案内容は比較的まともといえ、傾聴の価値ありと言える。スチュワードシップコード元年で機関投資家がどのような反応をするのか、気になるところだ。
(情報提供:日本IPO実務検定協会)
情報提供:上場.com