金融庁に設置された「コーポレートガバナンス・コードの策定に関する有識者会議」(以下、有識者会議)での議論が大詰めを迎えている。11月25日に開催された7回目の会合では、パブコメ案の検討が行われた。
注目すべきは【原則4-14.取締役・監査役のトレーニング】だ。以下、現行案を抜粋すると次のとおり。
新任者をはじめとする取締役・監査役は、上場会社の重要な統治機関の一翼を担う者として期待される役割・責務を適切に果たすため、その役割・責務に係る理解を深めるとともに、必要な知識の習得や適切な更新等の研鑽に努めるべきである。このため、上場会社は、個々の取締役・監査役に適合したトレーニングの機会の提供・斡旋やその費用の支援を行うべきであり、取締役会は、こうした対応が適切にとられているか否かを確認すべきである。
さらに、補充原則4-14(2)では次のように規定されている。
上場会社は、取締役・監査役に対するトレーニングの方針について開示を行うべきである。
従業員教育は従来より内部統制の一環として広く行われてきた。一方、役員のトレーニングはと言うと、なおざりにしていた会社も少なくないのではないだろうか。取締役や監査役に知識・ノウハウが不足していたことが不祥事の発生を招いた例は数多くある。それだけに投資家目線からは歓迎すべきコードと言えよう。
金融庁では、コーポレートガバナンス・コードの適用対象を東証1部・2部に限定する方向で検討中だが、有識者会議では東証1部上場会社のみにするべきなど、さらに適用対象を絞るべきとの意見も出ている。いずれにせよマザーズやJASDAQ等の新興市場の上場会社はコーポレートガバナンス・コードの対象外となる。
このコードがパブコメを経て確定した後は、東証1部上場会社(場合によっては東証2部上場会社も含む)は、コードに関して「コンプライ・オア・エクスプレイン」(コードに従うか、あるいは従わないことを説明するか)のどちらによるのかを会社の方針として決めなければならない。もっとも、役員トレーニングに関しては「コンプライしないことをエクスプレインする」ことは非常に困難といえ、「コンプライ」を選択せざるを得ない。その結果、上場会社としては役員のトレーニングの機会を提供し、その内容を証券取引所が要求するコーポレートガバナンス報告書にて開示することが必要になる。
具体的な開示に先立ち、上場会社の役員は、コーポレートガバナンス報告書における開示に耐えられる内容・レベルのトレーニングの実績を積む必要が生じることになる。自社や自分に合った研修制度を探す必要がありそうだ。
〇参考サイト 役員トレーニングで実績のある上場会社役員ガバナンスフォーラムはこちら
(情報提供:日本IPO実務検定協会)
情報提供:上場.com