昨年(2014年)の12月17日に公表され、1月23日までパブコメを募集中のコーポレートガバナンス・コード(原案)では、関連当事者取引について次のように定めている。
【原則1-7.関連当事者間の取引】
上場会社がその役員や主要株主等との取引(関連当事者間の取引)を行う場合には、そうした取引が会社及び株主共同の利益を害することのないよう、また、そうした懸念を惹起することのないよう、取締役会は、あらかじめ、取引の重要性やその性質に応じた適切な手続を定めてその枠組みを開示するとともに、その手続を踏まえた監視(取引の承認を含む)を行うべきである。
コーポレートガバナンス・コードによると、上場会社はコードをコンプライ(Comply:従う)するか、エクスプレイン(Explain:説明する)することを迫られる。その結果、上場会社で関連当事者取引を行っている場合、「取引の重要性やその性質に応じた適切な手続を定めてその枠組みを開示」するとともに、「その手続を踏まえた監視(取引の承認を含む)を行う」ことを、コンプライ(Comply:従う)するか、エクスプレイン(Explain:説明する)するか、選択しなければならない。
そこで疑問となるのが、関連当事者取引の注記を省略しているケースにおけるコードへの対応方法だ。有価証券報告書では、関連当事者取引は次の場合注記の省略が認められている。
a 連結財務諸表の作成にあたって相殺消去された取引
b 一般競争入札による取引並びに預金利息及び配当の受取りその他取引の性質からみて取引条件が一般の取引と同様であることが明白な取引(取引の性質からみて取引条件が一般の取引と同様であることが「明白」とはいえなければ、原則として開示対象となる)
c 役員に対する報酬、賞与及び退職慰労金の支払い
さらに金額基準でも注記の省略が認められている。そのような場合であっても、「取引の重要性やその性質に応じた適切な手続を定めてその枠組みを開示する」必要があるのかどうかが気になるところだ。コーポレートガバナンス・コード原案では明記されていないことから、確定したことは不明であるものの、「注記は単に省略されているだけに過ぎず、関連当事者取引が存在していることには変わらない」という声もある。そうであれば、関連当事者注記を省略している企業であっても、「取引の重要性やその性質に応じた適切な手続を定めてその枠組みを開示する」ことは免れないことになる。今後公表される確定版やパブコメ結果にて明確化されることを期待したいところだ。
(情報提供:日本IPO実務検定協会)
情報提供:上場.com