改正により、社外取締役を置いていない「有価証券報告書提出義務がある公開かつ大会社の監査役会設置会社」は、株主総会で「社外取締役を置くことが相当でない理由」を説明するとともに、株主総会参考書類・事業報告にも「社外取締役を置くことが相当でない理由」を記載しなければならなくなった。この「社外取締役を置くことが相当でない理由」を説得的に記載することはたいそう困難と言えるが、それをチェックする監査役はもっと大変である。なぜなら、その理由も含めて監査をしなければならないからだ。
この点、参考になるのが、日本監査役協会が3月5日に公表した「改正会社法及び改正法務省令に対する監査役等の実務対応」だ。これは、「―施行に向けた準備対応及び平成27年6月総会への準備対応を中心として―」という副題からもわかるように、5月1日から施行される改正会社法及び改正法務省令について、まずは施行日である5月1日以降に開催される定時株主総会に向けて監査役として準備しておくべき事項を取りまとめたもの。これによると、「社外取締役を置くことが相当でない理由」の開示が必要になった会社の監査役は次の点に留意することが必要とされている。
・「社外取締役を置くことが相当でない理由」が参考書類、事業報告に記載されているかどうか
・記載されている内容が施行規則の趣旨を踏まえて十分であるかどうか(具体的には、社外取締役を置くことが、当該株式会社の企業価値にマイナスの影響を及ぼすような事情が記載されているか、各社の事情に応じた説明がなされているか)
・改正の背景やこれに関する議論を踏まえて、取締役会において本件に関する十分な検討が行われたか、検討された内容やその結果は、株主への説明として合理的で十分か等について検証し、必要に応じて取締役会において意見を述べるべき
また、上記対応にもかかわらず「理由が記載されていない」場合や「結論に影響するおそれのある虚偽の事実が理由中に存在する」といった場合は、「事業報告が法令定款に従い当該株式会社の状況を正しく示していない」または「参考書類、事業報告の記載に法令定款違反や著しく不当な事項がある」ことから、監査報告へ意見を記載することが必要であるとしている。
本実務対応ではその他にも「社外取締役及び社外監査役の要件の厳格化及び緩和」「責任限定契約を締結することが認められる範囲の拡大」「監査等委員会設置会社について」「会計監査人の選解任等に関する議案の内容の決定及び会計監査人の報酬の同意について」「企業集団における内部統制システムについて」等会社法改正がらみの論点がコンパクトにまとめられていることから、監査役必見と言えよう。
(情報提供:日本IPO実務検定協会)
情報提供:上場.com