2月16日からスタートする所得税の確定申告に備え、事業者の多くが着々と準備を進めていますが、ついつい見直してしまうのが過去の申告内容。なかには、計算ミスなどを発見して所得税の還付申告を検討する人がいます。
ワンルームマンションを銀行借り入れで購入して、その賃貸料で儲けていた人たちの間で、思うように入居者が現れず借金の返済で悩んでいる人が意外と少なくありません。そこで、彼らが必ず検討してみるのが不動産所得と他の所得との損益通算です。この損益通算制度は、土地の取得に係る借入金利息を除く借入金利息について、給与所得などと相殺できるというもので、建物の価値の高いマンションの購入借入金利息は、源泉所得税の節税に高い効果を発揮します。
昨今の不動産不況から、副収入の不動産所得の赤字と他の所得との損益通算により節税を検討する人が少なくありませんが、問題は、過去の申告を見直して、改めて所得税の還付を受けることに挑戦する場合です。国税局税務相談室には、このところ「平成16年分の所得税の還付請求を平成22年2月に行って、所得税の還付を受けることはできるか」といった質問が寄せられるそうです。
質問の具体的な内容は、不動産所得の赤字と給与所得とを損益通算したところ、給与所得に係る源泉徴収税額が過大納付だったことから、所得税の還付を受けたいというものでした。税務相談室では「還付請求の起算日は所得が発生した翌年の1月1日となるので、平成16年分の所得税の還付請求できる期間は平成17年1月1日から平成21年12月31日までとなり、当該期間の経過後の還付請求は認められないと説明した」とのこと。節税も行うタイミングが重要なわけです。
民間企業で賃金のカットが相次いでいるせいか、医療費の支払いができない人が続出しています。まもなくスタートする所得税の確定申告でも、その未払い医療費がひとつの問題となっています。
全国の主要な病院約3,000件で毎年発生する患者の医療費の未払い金額は、総額で200億円を超えるといわれています。とくに、最近の景気の悪化で民間企業が従業員の給料をカットしているせいか、サラリーマンの医療費の未払いが増えています。
いつものように、所得税の確定申告の時期になると国税局の税務相談室には、医療費控除に関する質問が寄せられるのですが、今年は「昨年中に歯の治療をしたのだが、その治療にかかった50万円のうち昨年中に30万円を支払い、残りの20万円は今年になって支払った。この場合、50万円の全額が昨年分の医療費控除の対象になるのか」といった内容のものが目立つそうです。
医療費控除の対象となる医療費の金額は、その年中に実際に支払った金額に限られていて、その年中に治療が終わっている場合であっても、未払となっている医療費は、その年の医療費控除の対象にはなりません。そのため、税務相談室では先の質問に対して「昨年分の所得について医療費控除の対象となるのは30万円であり、残りの20万円は、本年分の所得に係る医療費控除の対象となる」と回答しています。