貯蓄性向の高い高齢世代から、消費性向の高い若い世代への資産配分を進めるため、政府・与党の間で贈与税を一時的に大幅に軽減して生前贈与を促進しようという動きが強まっています。
贈与税の軽減は、このほど開催された経済財政諮問会議後の記者会見で与謝野馨財務大臣兼内閣府特命担当大臣が「消費を拡大するという目的と、若い世代のニーズに応える、あるいは子育て世代のニーズに応えるという意味では、60歳以上のところに存在する大きな資産の固まりを、税という障害を取り除いて若い世代に移動してもよいのではないか、こういう議論であって、私としては、気持ちの上では賛成するところが多い」と語ったことから現実味を帯びています。
これに慌てたのが国の台所を預かる財務省。同省の杉本和行事務次官は定例の記者会見で「現下の経済情勢においては、景気回復に向けていかなる措置が考えられるかについて検討を深めていくことが重要だが、その際にも経済効果を図るためには、高齢者世代から若い世代への資産移転にとどまらず、それが需要創出につながっていく必要があるということ(消費が活発になること)。次に、高額資産家だけを優遇することにならないかという議論にどう応えるかという課題もある。また、その制度、執行の両面から適切に仕組めるのかということ(税収確保に風穴が開かないようにすること)もあるので、こういった点を踏まえて、検討を深めていくことが重要ではないかと考えている」として慎重に検討を進めていく姿勢を見せました。
3月27日、平成21年度税制改正関連法案が国会を通過しました。これを受け生命保険業界の動きが慌しくなっています。
近年の政府税制調査会の議論で生命保険料控除は「制度創設後長期間を経過し、その加入率も相当の水準に達して変化も見られないのであれば、既に所期の政策目的(自助努力による税制の誘因措置)は達成されたものと考えられることから、その存在意義はなくなった」として、廃止に向けた検討が進められていました。
ところが、平成21年度税制改正では生命保険料控除の制度が組み替えられ、拡充されたのです。現行の一般生命保険料控除とは別枠で、所得控除「介護医療保険料控除」が創設されました。ただし、この介護医療保険料控除の創設に伴い、現行の「一般生命保険料控除」と「個人年金保険料控除」の控除限度額は、所得税4万円、個人住民税2万8千円(現行、所得税5万円、個人住民税3万5千円)となりました。そして、介護医療保険料控除も同額の所得控除限度額が設けられたことから、生命保険料関連の所得控除限度額の合計は、所得税12万円、個人住民税7万円の合計19万円(現行の所得税10万円、個人住民税7万円の合計17万円)となり、実質的に所得控除額は拡大された形になっています。
なお、今回の改正内容のスタートは、平成22年度の税制改正において法制上の措置が講じられたうえで、平成24年1月以後に締結した生命保険契約から適用できることになっています。
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