行方が分からなくなった株主が持っていた株券を発行会社が強制的に売りに出した場合の課税関係を、このほど、東京国税局が明らかにしました。
会社法では、株式会社が株主に対して株主総会など通知をしても5年以上継続して行方が分からないために到達しない場合には、その株主が持っていた株式を競売し、その代金をその株主に交付することになっています。数多くの株主によって支えられているベンチャー企業などでは、株主の行方が分からなくなることはしばしばあることで、株券を発行している会社も対処に困ることから、そうした規定が会社法に定められているわけです。
しかし、株券の売却代金は、所有者だった株主が行方不明なので、当然、その株主だった人の元へ代金が届かないわけですから、売却代金が誰のもので譲渡所得税を誰に課税すればよいのか不明確でした。そこで、このほど東京国税局では、納税者の質問に答える形で、課税関係を明らかにしたわけです。
具体的には、(1)株式の市場売却による所得は、譲渡所得となる。(2)その譲渡所得の総収入金額の収入すべき時期は、株式の引渡しがあった日である市場売却の日。(3)所在不明株主の持っていた上場株式を金融商品取引業者等への売委託により行われた場合は、「上場株式等を譲渡した場合の株式等に係る譲渡所得等の課税の特例」や「上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除」などの各特例も適用できる―、と説明しています。そして、それに対応する税務は、その代金を預かっている発行会社が代行することになります。
100年に1度の経済危機が日本を襲っていることから、借金や買掛金の支払いに苦悩する中小企業が増えています。そして、裁判所に特定調停を申立てる会社も目立ち始めました。
借金などの支払い不能に陥る可能性のある個人や法人が、経済的破綻を回避して、再建を目指すときに活用するのが特定調停です。民事調停制度の一つで、裁判所の調停委員の立会いのもと、債権者と債務者との合意によって返済計画や債務の減免を決める制度ですが、この場合、税務上問題となるのは、弁済期限の延長などが行われたときです。調停を申立てた会社にお金を貸していた法人債権者は、予定していた債権の回収ができなくなるわけですから、ある意味貸倒れのような状態になるため法人税法の取扱いが非常に気になります。
返済期限の延長などが行なわれた場合の税務について国税庁では、「特定調停によって貸付金の利率の変更は行わず、弁済期限の延長等(弁済猶予、分割払含む)が行われた場合には、法人債権者の法人税の所得金額の計算には影響しない。それは、貸付金以外の売掛金などについても同じ。ただし、債権者集会などを通して取り決めた合理的な返済計画に基づいて弁済期限の延長が行われ、債権総額のうち、その特定調停が成立した日の翌日から5年を経過する日までに弁済を受けることとなっている金額以外の金額、つまり、6年目以降に弁済される金額は、個別評価の貸倒引当金に繰入れることができる」としています。
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